疾患やお悩みについて

その他疾患について

認知症とは

「認知症」は、病名ではなく特有の症状を起こす病態の総称です。認知症は原因により分類されており、最も多いのがアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)で、現在の日本では認知症の6割以上を占めると言われています。その他には脳血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症(ピック病)などがあります。アルツハイマー病と脳血管性認知症などの混合タイプもみられます。
認知症では、記憶力・コミュニケーション能力・言語能力・集中力・注意力・倫理的思考力・判断力・視覚認知力など様々な能力の低下を引き起こします。それにより、自分で動こうとする気力も失ってしまうことが多いのも事実です。

症状

認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」に分けられます。

【中核症状】
高齢者の認知症患者では、発症当初は記憶障害(物忘れ)が目立つことが多いですが、その他の症状も初期から少しずつ現れ、同時に進行していきます。
●記憶障害
誰もが老化に伴い物忘れが多くなりますが、認知症では脳で記憶司る「海馬」という部分が破壊されることにより記憶障害が起こります。
●見当識障害
時間や場所・周囲の人々との関係を理解する能力を「見当識」といいます。認知症ではこの能力が低下し、「見当識障害」を起こします。
●実行機能障害
認知症では、計画を立て、その工程を順序良く実行していく能力が低下します。それにより物事を同時並行することが苦手になり、料理や家電製品の使用が難しくなるといった症状が比較的初期から現れます。
●理解・判断力の障害
物事を素早く理解し、判断することが難しくなりますが、急がされなければ出来る場合もあります。信号や踏切を渡るタイミング、乗り物の運転ではこの能力が必要となり、障害により生命の危険に直結することもあるため注意が必要です。
●失行・失認・失語など
認知症では、道具の使い方など適切な手順で目的を達成する動作が難しくなる「失行」、目から得た情報を適切に認識できなくなる「失認」、音声や文章からの理解や言葉での表現が難しくなる「失語」などの症状が現れます。

【行動・心理症状】
認知症の患者は、上記のような中核症状により強い不安や混乱・自尊心の低下などの精神的苦痛を感じています。また、元々の本人の経験や性格も残存し続けています。それらの要因と周囲の環境や人々の対応などが複雑に絡み合って起こると言われているのが「行動・心理症状」です。
●暴力や暴言・興奮・介護拒否
本人が理解ができない状況で、尊厳が傷つけられるような体験をした場合に症状が強く現れると言われています。
●抑うつ・不安・無気力
認知症の症状により脳が疲れやすく、何か行動を起こそうとするエネルギーが出てこないことがあります。また、できないことが多く自信を失ったり、自尊心が傷ついた場合に症状が現れやすいとされています。
●道に迷う・行方不明(徘徊)
見当識障害が進行すると、見慣れている景色でも分からなくなります。外出時に道に迷うなどの症状から始まり、重度になると、一人で外出し、行方不明になることもあります。これを「徘徊」と言います。徘徊は、本人が自分の居る場所が理解できず、「ここがどこなのか確かめたい」「家に帰らなければ」というような感情から起こるとされています。本人にとってはそのような必然的な理由があるため、無理に引き留めて説得しても困難な場合が多いです。
●妄想
「妄想」とは、客観的にはあり得ない考えを、他人が訂正できない程に確信してしまう症状です。“置き忘れた財布を誰かに盗られた”などの「物盗られ妄想」、“理不尽な対応をされた、いじめられた”などの「被害妄想」、“配偶者が浮気をしている”などの「嫉妬妄想」が多くみられます。この背景には、本人が大切な人と関係性が悪化してしまうかもしれないというような不安を抱えていることなどがあるようです。
●幻覚
現実的にはあり得ない物をまぎれもない現実として見聞きしてしまう症状です。物を人や動物に見てしまう「幻視」や、誰かが話しているように聞こえてしまう「幻聴」などが代表的です。

リハビリ方法

認知症に対する代表的な治療法は以下の2つです。
・内科的治療(薬の服用など)
・運動(リハビリ)による症状の進行予防・改善

運動により脳血流や酸素量を増加させることは、脳細胞にメリットをもたらすことが分かっています。そのため、認知症ではウォーキングや軽いジョギング、サイクリングやエアロバイク(自転車こぎ)などの有酸素運動が効果的です。負荷の大きい運動を週1回行うよりも、週に3~4回、30分程度の軽い運動を行う方が効果的であると言われています。
毎日リハビリを行うことが理想ですが、無理をせず半年~1年程度継続して続けることで効果が明確になるとされています。ウォーキングや踏み台昇降などの運動と簡単な計算やしりとりなどの認知運動を組み合わせた「コグニサイズ」も認知症に効果的です。

糖尿病とは

糖尿病は、血液中を流れるブドウ糖(血糖)の濃度が高くなってしまう病気です。人間の体内では、本来は膵臓から出るインスリンによって血糖が一定の範囲に抑えられています。このインスリンが不足したり、働きが弱くなることにより高血糖を引き起こしてしまうのが糖尿病です。
高血糖が続くと、喉が渇く・水をよく飲む・尿の回数が増える・疲れやすくなる・体重が減るなどの症状が現れます。さらに長期間に渡り高血糖の状態が続くと、血管の損傷や心臓病・腎臓病・失明などの合併症へとつながります。また、著しく血糖が高い状態になった場合には突然、昏睡を起こす恐れもあります。

症状

糖尿病は1型糖尿病2型糖尿病に分けられます。それぞれ糖尿病が起こる原因が異なり、症状も異なる部分があります。
1型糖尿病は、インスリンの欠乏により発症する糖尿病で、自己免疫疾患により発病し、突然に症状が現れる場合が多いと言われています。
2型糖尿病は、インスリンの分泌不全やインスリン抵抗性によるもので、生活習慣病と呼ばれています。2型糖尿病は初期の段階では自覚症状がほとんどなく、非常にゆっくり、少しずつ症状が現れることが多いです。

【1型糖尿病の症状】
・喉が渇く
・頻尿
・急激な体重減少
・強い疲労感

【2型糖尿病の症状】
・疲労感
・皮膚の乾燥
・掻痒感
・手足の感覚の低下、チクチクとする痛み
・感染症にかかりやすい
・頻尿
・目がかすむ
・性機能異常(ED)
・傷が治りにくい
・空腹感やのどの渇きがひどい

リハビリ方法

糖尿病に対する代表的な治療法は以下の3つです。
・食事による栄養摂取量の調整
・内科的治療(薬の服用など)
・運動(リハビリ)による病気の進行予防、症状改善

糖尿病で効果的なリハビリは有酸素運動と筋力トレーニングです。有酸素運動は、筋肉への血流が増え、筋肉内へブドウ糖を取り込むことによりインスリンの働きが改善し、血糖値を低下させる効果があります。筋力トレーニングは、筋力を増加させることでインスリンの効果を高める効果があります。
足や腰・背中を中心とした適度な筋力トレーニングを週2~3回程度が理想で、運動をやめてしまうと3日程で効果が失われてしまうため、継続して行うことが何よりも大切です。
また、過度の筋力トレーニングは逆に血糖を高めてしまう恐れがあるため、必ず専門職と相談してから行うようにしましょう。

脊髄損傷とは

人間の背骨の内部には「脊髄(せきずい)」という脳と繋がる神経の束があります。脊髄は脳から出された指令を身体の末端に伝えたり、身体の末端で得た情報を脳に伝える役割を持っています。これにより手足を動かしたり、痛みや温度を感じ取ることができるのです。
何らかの原因で脊髄が傷ついた状態を脊髄損傷と言います。原因としては交通事故や落下事故などが有名ですが、高齢者の場合は転倒や転落が脊髄損傷となる原因の大半を占めています。

症状

脊髄損傷は、損傷の程度により「完全損傷」と「不完全損傷」に分けられます。
完全損傷とは、脊髄の機能が完全に壊れた状態で、脳からの指令は末端に届かず、運動機能が失われます。また、末端からの情報を脳へ伝えることもできないため、感覚機能も失われます。つまり、「動かない・感じない」という麻痺状態になるのです。しかし、全く何も感じないのではありません。麻痺部分に痛みや異常な感覚を感じることもあります。
不完全損傷は、脊髄の一部が損傷し、一部の機能が残っている状態です。ある程度の運動機能が残っている軽症から、感覚機能のみが残存している重症まで様々です。
脊髄損傷を受傷後、しばらくして慢性期になると「痙性」を起こすことがあります。痙性は、自分で動かせない筋肉が無意識に突然、強張ったり痙攣を起こすものです。
脊髄損傷による麻痺の程度は様々ですが、麻痺が強い場合は箸を使って食事したり、ペンを持って字を書くことが困難となり、特殊な道具を必要とします。また、歩くことが困難な場合には杖や車いすを利用することになるでしょう。さらに、頚椎のレベルでの脊髄損傷では最も重症となり、手足に加えて呼吸筋も麻痺を起こし、人工呼吸器なしには生命を維持できなくなります。
排尿や排便などの排泄機能も障害されることが多いのが事実です。尿意や便意を感じなくなったり、自力で排泄をすることが出来なくなるため、オムツや導尿カテーテルなどの道具を使用することになります。男性の場合では勃起障害などの性機能障害も現れるでしょう。
脊髄損傷を起こすと、運動・感覚だけではなく自律神経系も損傷を受けてしまいます。麻痺している部分では代謝が不活発となるため、怪我が治りにくくなります。また、汗をかく、鳥肌を立てる、血管を収縮・拡張させるといった調整も難しく、体温調節が困難となります。

リハビリ方法

脊髄損傷に対する代表的治療法は、運動(リハビリ)による悪化予防と症状改善です。
脊髄損傷の場合、残念ながら損傷した神経が元通りになることはありません。そのため、残された機能を上手く利用し、強化することで日常生活動作(ADL)を行うことが目標となります。リハビリでは、残存機能を弱らせないため、どの程度の機能が残っているか評価し、それに応じて目標設定していきます。
受傷後に社会復帰を実現するためには様々なハードルがあるでしょう。車椅子が必要な場合は、車椅子の操作方法や街中のバリアへの対応方法などの習得が必要であり、歩行できる場合にも歩行補助具の選定やトレーニングが必要となります。そのような時に、豊富な知識と経験を持つ専門職のアドバイスやサポートが大いに役立つでしょう。

筋挫傷とは

挫傷とは、鈍体による外力により皮下組織や筋肉・腱などに損傷が生じることを言い、このうち筋肉に損傷を受けたものを筋挫傷と呼びます。
外圧の大きさによっては、骨の損傷や骨折、軟部組織の損傷・炎症を合併することもあります。
筋挫傷は激しい接触を伴う格闘技やサッカーなどのスポーツでよく起こります。

症状

主な症状は激しい痛みと腫れです。スポーツでは大腿前面(太ももの前側)が好発部位(よく起こる部位)です。筋挫傷を起こすと、筋肉からの出血などにより、挫傷部位がパンパンなり、皮膚が光沢を帯びるほど腫れあがることもあります。腫れは受傷後数日が強く、その後徐々に落ち着きます。
痛みにより歩行ができなかったり、症状が長引くことにより筋組織の拘縮が起こり、関節の曲げ伸ばしが困難になる場合もあります。そして、拘縮が起こることでリハビリが億劫になり、リハビリの効果が十分に得られないという悪循環に陥ってしまう場合も少なくありません。

リハビリ方法

筋挫傷に対する代表的な治療法は、運動(リハビリ)による悪化予防と症状改善です。
挫傷が軽症の場合には、RICE処置(安静・アイシング・圧迫・挙上などの応急処置)により数日で腫れは治まります。しかし、中程度から重度の場合には、傷ついた筋肉にしこりや障害が残らないようリハビリが必要です。まずは痛みのない範囲で関節を動かし、機能を改善していきます。その後動きが正常に戻れば、痛みのない範囲での筋力強化(スクワットなど)やバランス改善の活動を開始し、日常生活が送れるように、さらにはスポーツ活動が行えるように回復を目指します。

呼吸器疾患とは

「呼吸器」とは、鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・気管・気管支・細気管支・肺などの呼吸に関わる器官のことを言います。その中でも気管や気管支、肺・胸膜などに異常が生じた状態を呼吸器疾患と呼びます。
気管や気管支は空気の通り道としての役割を持っており、肺は呼吸の要として働いています。
気管支に起こる疾患では慢性気管支炎や気管支拡張症・気管支喘息など、肺に起こる疾患では肺炎・肺結核・肺気腫・間質性肺炎・肺がんなどが有名です。
疾患の生じる部位により現れる症状は様々です。

症状

「気管・気管支」と「肺」では起こる病気と症状が異なります。

【気管・気管支の病気】
●慢性気管支炎
原因不明の咳が、一定期間(1年程度)のうち少なくとも3か月以上続くことがあり、その状態が連続して2年以上続く場合、慢性気管支炎と診断されます。
●気管支拡張症
気管支が広がり、元に戻らなくなる病気です。気管支が広がった部分は分泌物が溜まりやすく、細菌の温床となることにより感染を繰り返します。
●気管支喘息
何らかの刺激により発作が起こると、気道が狭くなる病気です。そのため喘鳴(ぜいめい)や咳により呼吸が苦しくなります。

【肺の病気】
●肺炎
風邪やインフルエンザを原因として肺に炎症が起こります。高齢者では、飲食物や胃内容物の逆流で誤嚥を起こし、肺炎を引き起こす場合もあります。
●肺結核
結核菌の感染により肺に炎症が起こる病気です。結核菌は空気感染を起こすため感染力が強く、結核菌が漂う空気を吸い込むだけで感染を起こします。
●肺気腫
肺胞の弾力性が低下し、ガス交換が十分に行えなくなります。その結果、息切れや呼吸困難を起こします。
●間質性肺炎
間質性肺炎では、数々の原因により、肺胞の周りの「間質」に炎症を起こします。炎症を繰り返すと、肺胞の柔らかい壁が破壊され、繊維化が進むことにより硬い組織が増加し、「肺線維症」に移行します。硬く縮んだ肺胞により呼吸ができなくなり、最悪の場合死に至ることもあります。

リハビリ方法

呼吸器疾患に対する代表的な治療法は以下の2つです。
・内科的治療(薬の服用など)
・運動(リハビリ)による悪化予防・症状改善

呼吸器疾患に対するリハビリで最も重要なことは、複式呼吸や口すぼめ呼吸などの正しい呼吸法を習得することです。呼吸器疾患では、気道が細くなり、塞がりやすい状態となるため、呼吸が浅くなってしまいがちです。そのため、正しい呼吸法を習得し呼吸の質を高めることが重要です。正しい呼吸法を習得することで、効果的な排痰(痰を吐いて空気の通りを良くすること)も可能になります。

運動療法も呼吸機能の維持・改善につながります。
ウォーキングでは全身の筋肉を鍛え、心肺機能を高めることで息切れなどの症状を改善することができます。特に足腰の筋肉を鍛えることが心肺機能の改善に効果的であると言われています。
ストレッチでは、胸郭と横隔膜の動きをスムーズにすることにより呼吸を改善します。呼吸器疾患を持つ人は、胸部の筋肉が硬くなる傾向にあるため、このようなストレッチにより深い呼吸が可能となるでしょう。